意地悪なお姫様

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「ありがとう、紗綾」 「え?」 「あの場から連れ出してくれて」 「私は何も……。ただ、茂住くんが仁坂さんと何か昔にあったみたいで」 「仁坂と?」 「うん。凄く嫌そうな顔したり、睦月くんがあのままだったら何かされるかもって……」 二人で首を傾げる。 茂住くんは先輩たちと会話を終えると私達を見た。 「二人ともどうした?」 「茂住くん、だよね?」 「徹平でいいよ」 「……あのさ、徹平。どうして俺の事助けたの?初対面だし、俺がどうなろうと関係ないでしょ?」 茂住くんは少し考えた末に小さく息をついた。 「俺、園原が俺の彼女と同じようになるの嫌だからさ」 「どういうこと?」 「園原は俺の友達で同僚だし、俺と似たような感じだし、社内でも特別っていうかさ。あ、別に恋愛的に好きってわけじゃないから!人として好きって感じだから!」 「それは分かるけど……。徹平の彼女と同じようになるって何?」 「なんて言うか、睦月くんが俺の友達と重なって見えたって感じ、かな?」 「睦月でいい。ていうか、徹平の友達と重なるって何?それとどんな関係があるわけ?」 茂住くんはため息をつくとチラッと仁坂さんを見た。 「仁坂音夢……あいつが俺の彼女をいじめて、自殺させようとした奴」 その言葉に睦月くんと驚く。 茂住くんは思い出したくない事を思い出したように苦々しい顔で手元のお酒を飲んだ。 「俺とあいつ、同じ高校だったの。あいつが高校時代好きだった相手は俺の友達で、俺の彼女の幼馴染。俺の彼女は友達と幼馴染だから結構仲良くてさ。俺とも話す機会が多くて、だから好きになったんだけど……。仁坂は、自分が中心になって話しを進めないと不機嫌になるでしょ?」 睦月くんは茂住くんの言葉に頷いた。 「俺の友達はそんな仁坂の事が嫌いで、ずっと冷たかったわけ。でも彼女には優しくて笑いかけてた。それが気に食わなかったのか、仁坂はえげつないいじめを繰り返して彼女の心を傷つけた。ていうか、今でもあの時自殺止めれて良かったって思うよ。間に合ってなかったら俺、マジで仁坂殺してる」 乾いた笑いを浮かべる茂住くん。 茂住くんはずっと仁坂さんを恨んでる。 二度と会いたくなかっただろう、顔も見たくなかっただろう。 大事な人を苦しめた人なんて、誰だって会いたくないに決まってる。 「今俺の友達はアメリカに留学してて、金髪美女と付き合ってるよ。それで、仁坂の新しいターゲットになっちゃったのが睦月」 茂住くんの言いたい事が分かったのか睦月くんが私の手を握る。 「睦月、仁坂の事結構冷たくあしらってるでしょ?それに園原が彼女だって知ってる。だからちょっと怖くなって。園原が俺の彼女みたいに仁坂に何かされたら嫌だなって思って、それで睦月の事助けたの。迷惑だった?」 「迷惑じゃない。むしろ、言いたくない事言ってくれてありがとう。教えてくれて良かった」 睦月くんの言葉に茂住くんが笑う。 それから睦月くんにメニューを渡した。 ・
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