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睦月くんも茂住くんもとても仲良くなったのか、一緒に高校時代の事を話している。
私はお手洗いに行くために席を外した。
手を洗っていると、睦月くんのサークルメンバーの女の子達がやって来た。
正直会いたくない。
関わりたくもない。
仁坂さんもいるし、さっきの茂住くんの話を聞いたあとでは話したくない相手だった。
何も言わずに立ち去ろうとすると仁坂さんが口を開いた。
「地味でブスで全然似合ってない睦月くんの彼女さん」
「!!」
「大学行くお金なくて就職したの?茂住くんと同じだね。貧乏人」
その言葉は、許せなかった。
確かに決して裕福じゃないけど、それでも私はお母さんと一緒に暮らせているだけで満足だった。
きっとそれは茂住くんだって同じだ。
お父さんのために就職を選んだ。
それだけなのに、その言い方は許せない。
だけど、私には言い返す勇気がない。
怒ってるのに、どうしても怖くて言い出せない。
弱虫で意気地なしのヘタレ。
「睦月くんといい加減別れてよ。遊ばれてるってまだ分からない?睦月くんがお前みたいな地味ブスを本気で好きになるとか思ってるわけ?お前なんてどうせ、睦月くんの性処理道具なんだよ」
周りの子も仁坂さんに合わせて笑う。
怖くて、足が全然動かなかった。
そんな時だ。
「それはどうかと思うけど」
会社の先輩が首を傾げて入ってきた。
仁坂さん達が固まる。
先輩は私の隣に来ると仁坂さん達にニコッと笑った。
「私は別にいつ就職しようと個人の自由だと思うし、人にはそれぞれ事情があるわけじゃない?それなのに勝手に『貧乏人』とか言うのは、その人に対する侮辱だと思うな」
「何……」
「あなた達が何を言っても許されるって思ってるなら私も言わせてもらうけど、私から見ればあなた達なんて親のすねかじりながら大学で遊んでるだけのクソガキだと思うな。それなら、高校卒業して就職して働いてる園原さんの方が大人だと思う」
先輩の言葉にどんどん赤くなる女の子達。
「園原さんの彼氏はクソガキじゃ満足できないんだと思うな。大人な園原さんの事が好きなんだから、あなたみたいなクソガキを相手にするわけないじゃん。だって、あなたってセックスしてる時無駄に大きな声で喘いでそうだもん」
「な……っ」
「いくら可愛くても、鳴き声がオットセイじゃ幻滅されちゃうからね」
ケラケラと笑う先輩。
私は先輩を呆然と見た。
「あなたって、見た目は可愛いお姫様だけど、中身は意地悪で卑怯者なブスドブネズミじゃない。周りの子も、友達は選んだ方がいいと思うよ。これは大人からの忠告だから」
先輩は私の手を掴むとニコッと笑った。
「クソガキはさっさとママのとこに帰っていい子でねんねしてな。親に貰った金で遊んでんじゃねーよ。経済力もない子供が大人の真似事してんな」
そう言い捨てると先輩は私を連れ出した。
その瞬間我慢してた涙が溢れだした。
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