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「怖かったね、園原さん。園原さんが遅いからって皆心配してるんだよ。早く戻ろうか」
先輩は優しく私の頭を撫でてくれる。
私は先輩に頭を下げた。
「助けていただき、ありがとうございました……っ」
「いいんだよ。聞いてて私も腹立ったし」
「家の事も馬鹿にされたのに……友達の事も、何も、言い返せなくて……っ。凄く悔しいです…っ」
「悔しくて当たり前だよ。それに、怖いのも当たり前。こういうのは大人に頼っていいんだから。園原さんの彼氏も心配してるから、戻って安心させてあげないとね」
先輩に頷いて席に戻る。
泣いてる私に驚いている睦月くん。
先輩は周りの人に事の経緯を話してくれた。
「やっぱり、園原が標的になったんだ……」
茂住くんが悔しそうに顔を歪める。
すると睦月くんが私の手を握った。
「徹平は何も悪くない。俺が仁坂から距離を取ればいいだけ」
「そんなことしても仁坂は絶対に園原に……」
「それなら、俺が紗綾が危なくないようにする。会社にいるときは徹平とか先輩方がいるから大丈夫だと思うし、紗綾を一人にしなければ問題ない」
睦月くんの言葉に茂住くんは目を数回瞬かせて、それから笑った。
「俺らの事信頼してくれてありがと」
「これだけ紗綾の事助けてくれてるのに信頼しないなんておかしいでしょ」
そう言って睦月くんは私の涙を拭った。
時間も時間になり、私達は帰る事になった。
睦月くんと手を繋いで帰り道を歩く。
今日は星がとても綺麗だ。
「俺やっぱり何が何でもサークル辞める」
「……」
「紗綾の事こんなに泣かせて、徹平の事も馬鹿にして、そんな奴を友達だとどうしても思えない。俺と友達になりたいって思ってくれたから大事にしろって紗綾は言うけど、もう無理」
「睦月くん……」
「紗綾、何度も言うけど俺の優先順位は圧倒的に紗綾が一番だから。紗綾が何を言っても俺はもうサークル辞めるし、あいつらとも関わらない」
睦月くんは決意したように私の手を強く握りしめた。
また私は彼に無理をさせた。
私のせいで、私が強くないからこうなった。
可愛い意地悪なお姫様を、私がどうにも出来なかったから……。
後悔して、私はまた涙を流すのだった。
【意地悪なお姫様】
~彼女は絶対に、まだ彼の事が好きなはず~
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