長期休暇の始まり

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実家に泊まって、私と睦月くんは次の日に睦月くんの家に行くことに。 久しぶりで緊張していると睦月くんのご両親が優しく笑いかけてくれた。 「そんなに緊張しないで。自分の家だと思ってくれていいからね」 こんな豪華な家を自分の家だとは到底思えない。 困ったように笑い返すと睦月くんがため息をついた。 「母さん、紗綾の事好きなのは分かるけどお菓子作りすぎじゃない?」 目の前に置かれている美味しそうなお菓子の数々。 どれも睦月くんのお母さんの手作りだ。 「だって、紗綾ちゃん甘いもの好きでしょ?私が作ったお菓子毎回美味しいって食べてくれるから嬉しくて」 「だからって、こんなに食べられないから」 呆れた様子の睦月くんに、少し不満気な睦月くんのお母さん。 そんな二人を微笑ましく見ている睦月くんのお父さん。 全員美形すぎて目のやり場に困る……。 「私は嬉しいよ。どれも美味しいし」 「紗綾ちゃん……っ!本当に可愛い!やっぱり女の子は男の子と違って素直で可愛いわー」 「私も睦月くんに美味しいお菓子作れるようになりたいし、お母さんに教えてもらおうかな」 「紗綾が作ったものなら、たとえ失敗していようと絶対食べるから安心して。母さんに教わることない」 「ちょっと睦月!その精神はとても素晴らしいけど、私から教わる事ないってどういうこと!?」 膨れるお母さんをなだめるお父さん。 睦月くんは知らん顔しながらコーヒーを飲んでいる。 本当に仲良しだな。 私が笑っていると睦月くんが私の手を握った。 「二人とも、紗綾が可愛すぎて早く二人になりたいから部屋行っていい?」 「!?」 「紗綾ちゃんの事襲っちゃダメだからね!?」 「!?」 「保証は出来ない」 「!?」 そう言うと睦月くんは問答無用で私を部屋に連れてきた。 久しぶりに入った睦月くんの実家の部屋。 この部屋に、元カノさんとかも来たんだよね……。 そう考えるとちょっとモヤっとする。 心が狭いな……。 「やっと二人になれた」 「私は睦月くんのご両親の事好きだから、一緒に居ても苦じゃないよ?」 「そうじゃなくて、俺が嫌なの。二人に紗綾の事取られたみたいで」 私に抱き着いてきて拗ねている睦月くん。 ちょっと可愛いって思うのはどうしてだろうか。 「こうやってお互いの実家に帰るって、なんか結婚したみたいだね」 「え!?」 「これからずっと、こうやって二人でお互いの両親に会えるといいな」 そんな嬉しい事を言ってくれる睦月くんがとても大切だ。 私のお母さんを大事にしてくれて、考えてくれて。 お母さんが今まで頑張ってくれていた事、誰よりも分かってくれた。 睦月くんが私の初めての彼氏で本当に良かった。 「あ、そうだ。せっかくだし地元散歩しない?」 「え?」 「高校の時出来なかったし、地元デートしよう」 ・
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