学生王子に翻弄されて

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お風呂に入ってからボーっとテレビを見る。 賑やかなバラエティー番組を見ても何も楽しくなかった。 どうして田原くんは大学生になったんだろう。 そりゃ大学に行くことは悪い事ではないけど。 時間は社会人と学生では全然合わない。 会いたいと思ってもすぐに会えない。 私も大学に行っていれば同じ時間を共有出来たんだろうか。 今更考えても仕方ないことばかりが浮かぶ。 今日はこのまま寝よう。 明日は休みだし、夜更かししたかったけど。 テレビを消して立ち上がる。 すると家のインターホンが鳴った。 こんな時間に何? ていうか、私ルームウェアだし、外に出たくないっていうか……。 化粧だって落としてすっぴんだし。 どうしようか悩んでいるとスマホが鳴った。 次から次に何? ディスプレイを見ると田原くんの名前が表示されていた。 「田原くん?」 電話に出ると田原くんが話し出した。 『紗綾、玄関開けて』 「え?玄関?」 もしかして……。 私は玄関に行って鍵を開けた。 扉を開けると同時に抱き締められる。 紛れもなく、私を抱き締めているのは田原くん。 手に持ったスマホが手から滑り落ちる。 扉が閉まる音が聞こえてハッとした。 「田原くん!?」 「さっきの電話、紗綾の様子が変だったから」 ギュッとしてから少しだけ体を離す田原くん。 私の顔を見ると田原くんは私の頬に手を滑らせた。 茶色のフワフワの髪の毛、色素の薄い瞳、両耳についた控えめなピアス、私の名前を呼ぶ綺麗な形の唇……。 そのどれもにドキドキしてしまう。 クールで、あまり多く笑わないけど、私の事を大事にしてくれているのは分かる。 やっぱり、近くで見ると綺麗な顔がより綺麗に見える。 カッコいい……っ。 「お風呂入ったの?」 「え……あ、うん」 「紗綾、いい匂いする」 私の髪に顔を近づけて匂いを嗅ぐ田原くん。 私は真っ赤になって田原くんの肩を掴んだ。 「し、心配かけてごめんね!!」 私がそう言うと田原くんはジッと私の目を見た。 この綺麗な瞳で見つめられると緊張して息が出来なくなる。 ドキドキして見つめ返すと田原くんは私を離した。 「紗綾」 「は、はい……」 「中、入ってもいい?」 ここが玄関だということをすっかり忘れていた。 私は慌てて田原くんを部屋にあげた。 ソファーに座ってもらって、とりあえずコーヒーでも淹れる。 田原くんの前に置くと田原くんが私の手を引いて隣に座らせた。 ・
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