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睦月くんの提案で地元を一緒に歩くことになった。
高校で通っていた通学路を、こうして一緒に歩いているのは何だか不思議な感覚だった。
「高校生の時から本当はずっと紗綾と一緒に歩きたかったんだけど、俺の事避けてるし、紗綾に迷惑かけたくなかったし、全然声かけられなくて。あの時の時間は取り戻せないけど、今こうして紗綾がずっと一緒にいてくれるからいいかなって思える」
「高校生の時は……睦月くんは私とは違う生き物だと思ってたから……」
「同じだよ。紗綾の事がずっと好きなただの男の子」
「そ、そう言われると恥ずかしい」
「昔も今もこの先も、紗綾の事ずっと愛し続けるから」
甘すぎるセリフに真っ赤になっていると商店街にたどり着いた。
地元の人達で賑わっているこの場所に立ち寄ったのは何年ぶりだろう。
お母さんのお使いでしかあまり来なかったから。
「紗綾は結婚したらどんな場所に住みたい?」
「ゆっくり出来る場所に住みたいかな」
「街中とかじゃなくて?」
「街中は疲れるもん。今は仕事で仕方なく街中に住んでるけど、本当は静かに暮らせたらいいなって思ってるし」
「そっか。わかった」
「え?なにが……」
「静かに暮らせる場所探しとく。大学卒業したら住めるように」
「!?」
「俺、卒業したら速攻で紗綾と結婚するつもりだから」
「え!?は、はい!」
ふわっと微笑まれて息が出来なくなる。
当たり前のようにそう言ってくれる嬉しさ。
この人は私にとても甘くて、そして嬉しい事をたくさんくれる。
こんなに幸せなの、なんだか怖いな。
「そういえば、ベルと深紅が一緒に遊ばないかって聞いてた」
「え?いいの?」
「もちろん。だって紗綾もあいつらと友達でしょ?帰ったらどっか行こっか」
「ありがとう」
「何がしたい?」
「……私、行ってみたい水族館があるんだけど」
そう言ってスマホで検索して睦月くんに見せる。
「ああ、ここって最近出来たって言われてる」
「うん。大きな水槽で泳ぐ魚を見たいなって思ってたの」
「じゃあここ行こうよ。二人にもラインしとく」
「え、いいの?私一人が行きたがってるだけだし……」
「異論は認めないから大丈夫。ていうか、あいつら基本的に他人任せだし『いいよ』って絶対言うから安心して」
本当にいいのだろうか……。
何だか申し訳なくなったけど、それ以上言ってもいつもみたいに『大丈夫』としか言われないだろうから黙ってる事にした。
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