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恐怖で顔が固まる。
どんどん近づいてくる加藤くんに冷や汗が止まらない。
彼に知られたらどうなるだろう。
『睦月くんと付き合った』なんて彼に知られたら……。
「園原さんも帰ってきてたんだ」
「……」
「俺、卒業したら園原さんに言おうって思ってた事があったんだ。でも卒業式の日さ、園原さんの事結局見つけられなくて。言えずにずっといたんだよね」
「言いたい、事……?」
「うん。俺、実はずっと園原さんの事好きだったんだよね」
彼の口から信じられない言葉が聞こえた。
私を、好き?
そんなわけない。
だって彼はいじめの主犯格だ。
女の子達にいじめられるようになったのも、一人にさせられていたのも、全部彼が……。
「誰にも取られたくなくてさ、周りが園原さんの事を遠ざけるように仕向けたんだよね。俺だけの園原さんにしたくて」
「な…に……」
「実は俺、園原さんを汚い男達から守ってたんだよ?園原さんが俺以外の男に汚されるとか許せなくてさ。だからずっと言ってたんだよ。『睦月に近づかないで』って」
「なんで……?」
「だってアイツ、顔も良くて性格もいいでしょ?園原さんいい子だし、睦月って園原さんみたいな子好きになりがちだから、園原さんの方が睦月を避けてくれたらアイツも好きにならないかなって」
そんな勝手な理由で私はいじめられてたの?
睦月くんに、話すことも出来なかったの?
加藤くんが私の隣に座って手を握ってくる。
睦月くんに握られた時みたいな感じじゃなくて、気持ち悪くて、嫌悪が走る。
「い、や……っ」
「俺ずっと園原さん可愛いなって思ってたんだ。可愛いその顔、俺の手でめちゃくちゃにしてやりたいなって。俺の言う事全部聞いてくれる、従順な彼女になってくれそうだなって」
加藤くんの手が私の顔を撫でる。
気持ち悪い。
今すぐに逃げ出したいのに、体が固まって動けない。
「ねぇ、俺と一緒に遊びに行かない?」
どうしよう、助けて……っ。
涙が溢れてきて過呼吸になってきた時だった。
「行かねーよ、馬鹿」
加藤くんの頭の上から飲み物がぶちまけられた。
一瞬何が起きたか分からなくて驚く。
すると私は加藤くんから引き離されるように手を引かれて立たされた。
「睦月……?」
加藤くんが睦月くんを見て驚いている。
睦月くんは本気で怒った顔をしていた。
「やっぱりお前が紗綾いじめてたんだな」
「は?なんで……」
「お前が紗綾の事好きなのは知ってた。お前の気持ち悪い性癖も。何となくそうなんじゃないかなって思ってたけど、確証無いし疑うのも悪いって思ってた。疑って正解だったわ。残念だけど、紗綾は俺の彼女だから。卒業式の日に紗綾と会わせなかったのは俺だよ。だってその日から、紗綾は俺の彼女になったんだから。俺以外の男に会わせるわけなくない?」
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