長期休暇の始まり

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水族館を堪能した私達は睦月くんの家に行ってご飯を食べる事になった。 スマホでデリバリーして睦月くんの家でくつろぐ久篠くんとベルちゃん。 そんな二人に睦月くんはため息をついた。 「紗綾がくつろぐならいいけど、お前らはダメ」 「なんで?」 「差別だ」 「俺の家は紗綾の家でもあるから紗綾はいいんだよ」 急にそんな事を言われてドキッとする。 凄く嬉しい……っ。 不満を口々に言っている二人。 するとチャイムが鳴った。 デリバリーが来たのかと思い睦月くんがインターホンの前に立つ。 すると睦月くんが固まった。 「睦月くん?」 不思議に思った私は睦月くんに近づいた。 インターホンを見ればそこには仁坂さんとサークルが一緒だった人達。 「なんで……」 「うわ、なんで仁坂音夢がここに?てか普通にストーカーじゃん」 嫌悪を表したような顔をするベルちゃん。 久篠くんは睦月くんを見た。 「どうするの?睦月。このまま居留守つかう?」 「そう出来ればいいけど、もうすぐデリバリー来るだろ。それでバレる」 「あー……」 「素直に帰るような連中じゃないし、どうするか……」 困っている睦月くん。 私が出来る事ってあるかな。 いつも助けてくれてる睦月くんに何か出来ればいいのに。 「私が受け取りに行くよ」 「え?」 「デリバリー。エントランスまで行けば一緒にここまで来ないでしょ?それに睦月くんは会いたくないみたいだし、ベルちゃんや久篠くんが行ったら学校でも顔を合わせるのに、この先何かあっても大変だし。その点、私なら学校行ってないし顔を合わせる事も少ない。嫌がらせされる事もないから適任だと思うの」 「でも紗綾、仁坂音夢に何されるか分からないよ?」 ベルちゃんが心配して私の肩に手を置く。 私はベルちゃんに笑った。 「大丈夫。この人たちは私が睦月くんの彼女って知ってるから。私が行けば睦月くんは私と居るって分かって帰ると思う」 「そんな物分かりがいいなら、とっくに睦月はこの人たちを帰してるよ」 久篠くんの言うことはもっともだ。 だけど、3人は私を助けてくれた。 私はこの人たちに何かしたい。 多少私が危なくなっても、怪我をしても、それで皆が守れるならいい。 私は玄関に向かって靴を履いた。 そんな私の肩を掴む睦月くん。 「睦月くん?」 「俺も行く」 「でも……」 「ていうか、俺が行った方が早い。あいつらと話せるの、俺しかいないだろ」 「睦月くん、大丈夫?会いたくないんじゃない?」 睦月くんの様子だと、きっと彼らに会いたくないんだろう。 苦手って言ってたし、睦月くんを一人に絶対にしてくれなかっただろうし。 こうしてサークルを辞めても会いに来るのは、単に彼らが睦月くんを好きだからだと思いたい。 でも、違う気がする。 男の子は睦月くんを使って女の子を呼ぶため、女の子は睦月くんを狙ってるため。 ずっと睦月くんはそういった中で生きてきて、嫌気がさしてたんだ。 ・
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