114人が本棚に入れています
本棚に追加
/91ページ
「そうだよ!ズルい!」
「サークル辞めたのだって彼女さんがワガママ言ったからでしょ?嫉妬とか睦月くんに迷惑だと思うけど」
「彼氏の自由奪うって、束縛激しすぎー」
「私達よりも『大人』なんでしょ?だったら我慢とかしたら?大人げないですよー」
馬鹿にしたように笑う人達に心がえぐられる。
心配したように見てくるデリバリーの人にお金を払って笑顔で見送る。
仕事をしてる人の邪魔をしちゃいけない。
デリバリーの人はお礼を言って去って行った。
私は、何のためにここへ来たの?
睦月くんを守るためでしょ?
ここで逃げたら、ここへ来た意味がない。
変わるって決めた、戦うって決めた。
私は強くなりたい。
加藤くんに言い返せなかった自分に腹が立った。
自分で自分を守れなかった自分を殴ってやりたかった。
もう二度と、睦月くんの自由をこの人たちに奪わせないって決めたの。
私は息をついて冷たく仁坂さん達を見た。
「まず、睦月くんは物じゃない」
「は?」
「さっきから『貸して』って、何言ってるの?睦月くんは物じゃないんだから『貸す』とか『貸さない』とかの話じゃないと思う」
「何……」
「睦月くんが貴女たちと『遊びたい』って言うなら行けばいい。私は貴女たちよりも『大人』だから我慢してあげる」
「!!」
「でもそうじゃないなら、私は睦月くんを貴女たちと一緒には居させない。大人げないことだって平気でする。大人だって、我慢できないことはあるんだから。嫉妬?束縛?それが睦月くんを守る事になるなら、どれだけ罵倒されたってかまわない。いくらでも非難してくれてかまわない。そんなもの、いくらでも我慢してあげる。
私の大事な人の自由を奪ってるのはどっち?
大勢で押しかけて迷惑かけてるのはどっち?
嫌がってる相手の家に無理やり入ろうとしてる犯罪者予備軍はどっち?
そんな事も分からないお子様が、大人に歯向かうなんておこがましい」
睦月くんに絡みついていた女の子達はバツが悪そうに睦月くんから手を離す。
男の子達も視線を彷徨わせていた。
「人を物扱いして、挙句の果てに『ごめんなさい』も言えない子供に、睦月くんと友達になる資格なんてない」
「……っ」
「お引き取りください。ファミレスでお子様ランチでも食べながら旅行の計画でも立てられては?」
私がそう言うとサークルの人達は睦月くんから離れて自動ドアを出た。
それからマンションをあとにする。
完全に帰ったのを見届けると私はその場に座り込んだ。
・
最初のコメントを投稿しよう!