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「紗綾!」
睦月くんが私に駆け寄ってくる。
それから私を抱き締めた。
「睦月くん、私ちゃんと言えたよ」
「うん」
「怒ってるって、あの人達に伝えられたよ」
「うん」
「睦月くんの事、助けられたかな」
「充分すぎるくらい助けられたよ」
「良かった」
安全して笑うと睦月くんが私の手を掴んで立ち上がらせてくれた。
持っていたデリバリーの袋も睦月くんが持ってくれる。
手を繋いでエレベーターに乗る。
まだ心臓がドキドキしてる。
少し、強くなれた気がするからだろうか。
深く息をつくと急に睦月くんに口づけられた。
「!?」
「……ごめん、紗綾。俺のために頑張ってくれたとか、俺のために怒ってくれたとか、色々考えたら、もう我慢出来なかった」
何度も口づけながらそう言って私を離さない睦月くん。
目的の階まで到着して、ようやく睦月くんは私を解放した。
「紗綾、好き」
「……っ」
「好き、大好き、愛してる。俺を助けてくれてありがとう」
その言葉に何故だか泣きそうになった。
ちゃんと助けられたんだって実感して、嬉しくて。
私は泣きながら睦月くんの部屋に戻った。
私が泣いている事にベルちゃんも久篠くんも慌てていたけど、そうやって心配してくれる人がいることも幸せだなって思えた。
【長期休暇の始まり】
~この夏は私が強くなる一歩を踏み出せた~
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