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「長期休暇、どうだった?」
茂住くんからそう言われて私は茂住くんを見た。
「睦月くんと沢山過ごせたよ。茂住くんは?」
「俺も彼女とずっと一緒にいた。本当に可愛かったわー。あ、写真見る?」
嬉しそうに私に写真を見せてくる茂住くん。
相変わらず彼女を溺愛しているのか、写真でもくっ付いて離れていない。
ちょっと困った顔してるけど、彼女さんも嬉しそうだ。
「そうだ、俺彼女にプロポーズしたんだ」
「え!?」
「彼女も喜んでくれてさ、結婚することになった」
「おめでとう!」
「ありがとう。まあ、お互いの両親に挨拶行ったり色々しなきゃだけど、今はただ純粋に嬉しさ噛みしめたいって感じ」
「結婚式には呼んでね」
「もちろん。睦月くんと一緒に呼ぶよ」
そう言ってから茂住くんは気まずそうに視線を逸らした。
「どうしたの?」
「いや、実はさ……。嬉しさのあまり、そのまま彼女押し倒して気絶するまで抱きつぶしたって言うか……」
「へ!?」
「ゴムの箱、空になるまでして、それでもおさまらなくて……」
「もしかして……」
「多分、想像してる通り。生でして、そのまま中に…って感じ」
「結婚する前に妊娠したらどうするの!?」
「いや、責任は持つし、絶対に結婚するよ!!ただ、彼女の親にそうなったらなんて説明したらいいのかって……」
「喜ぶのはいいけど、あとのこと考えて行動しないと……」
茂住くんは困ったように笑った。
「妊娠しても、反対されても、それでも認めてもらえるまで何度でもお願いに行く覚悟はあるよ」
「そうじゃないと彼女さん可哀想」
「あはは」
「笑い事じゃないから」
相変わらず能天気な茂住くんに頭を抱えそうになる。
でも、幸せになってもらいたいな。
私の大事な友達だし。
私は茂住くんに笑いかけた。
仕事を終えてマンションに帰る帰り道。
夕飯の買い物のためにスーパーに立ち寄ると、賑やかな集団が目についた。
なんだか見覚えのあるような……。
そう思いながらも特に気にせずに横を通る。
「今度の同窓会、どうする?」
そんな会話が聞こえてきて私は高校時代を思い浮かべた。
同窓会か……。
私が呼ばれることってあるのかな。
地味で友達もいなかった学生時代。
きっと誰も覚えてないだろう。
私をいじめていた人達だって私なんてもう忘れて楽しんでる。
新しい標的を見つけたかもしれない。
何となくそう思ってその場をあとにした。
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