114人が本棚に入れています
本棚に追加
マンションのインターホンが鳴った気がして目を覚ます。
どれくらい寝てたんだろう……。
時間を確認すると1時間ほど寝ていたみたいだった。
服もメイクもそのままだ。
ボーっとしているともう一度インターホンが鳴った。
夢じゃなかったんだ。
相手を確認するためにモニターの前に移動する。
そして固まった。
だって、睦月くんが立っていたから。
なんで……だって彼は同窓会行って……。
部屋の明かりがついている時点で私がこの部屋にいる事はバレている。
居留守を使っても絶対に彼は帰らないだろう。
でもこんな気持ちで、こんな崩れたメイクで、彼に会いたくない。
きっと同窓会で新しい彼女でも出来たんだろう。
別れ話されるなら、せめて誕生日じゃない日にお願いしたい。
最後の誕生日プレゼントがそんな悲しいものだなんて絶対に嫌だ。
モニターの通話ボタンを押して口を開く。
「……はい」
「紗綾!」
「ごめんなさい……今日は、帰ってください……」
「……っ」
「ちゃんとお話は聞きます。だけど、今日は嫌です。会えるような顔してないし、しっかり話をきけるような状態ではありません。ワガママ言って、本当にごめんなさい」
そう言って通話を切ろうとすると睦月くんが口を開いた。
「紗綾がここを開けてくれないなら、強制的に入るからいいよ」
「!?」
何を言ってるのか一瞬理解出来なかった。
そうだ、睦月くんに合鍵渡してた。
だったらどうしてその鍵を使わずにインターホンを押したの?
勝手に入ってくればいいのに……。
入ってこられても困るんだけど……。
戸惑っている間に鍵が開いて睦月くんは中に入って来る。
立ち尽くす私の前にやって来ると頭を下げた。
「本当にごめん」
「え……何が……」
「俺……」
その先の言葉を想像して青ざめる。
そして私は睦月くんの口を手で塞いだ。
「ま、待って!ちょっとだけ時間をください!」
「……?」
「せめて今日が終わってからにしてほしいです……っ」
そう言うと睦月くんは私の手を握ってそのまま手に口づけた。
・
最初のコメントを投稿しよう!