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何をしてるの、この人!?
ビクッとして手を引こうとしても強く掴まれて阻止される。
睦月くんは私の目を見つめるとそのまま引っ張って私を抱き締めた。
「え……」
「今日じゃなきゃダメ」
「なんで……」
「だって今日、紗綾の誕生日だから」
誕生日だから別れ話するの?
誕生日だからどん底に突き落とすの?
そんなに私の事嫌いなの?
私は一体どれだけ彼に嫌な思いをさせたんだろうか。
「ご、めんさな……っ」
「誕生日おめでとう」
思ってもいなかった言葉に固まる。
あれ?
普通におめでとうって言われた?
「あと、本当にごめん。先に言っとけば紗綾が傷つくこともなかったのに、どうしても俺紗綾にサプライズしたくて黙ってたんだ」
「忘れてたんじゃ……」
「忘れるわけないでしょ。ずっと用意してたんだから」
「用意?」
「本当はいますぐ連れて行きたいんだけど、連絡して明日に変更してもらったから。今日は紗綾の事、癒させて」
何のことか分からなくて戸惑うばかり。
睦月くんは少しだけ私を離すとソファーに一緒に座った。
「まず、主語の無いメッセージ送って紗綾に勘違いさせてごめん。同窓会の招待って全員送られてるって勝手に思ってて、主催に聞けば連絡先知らない人もたくさんいたけど友達で集まれればいいかって安易な考えで決行されたみたいでさ。同窓会行ったあとに紗綾にサプライズすることしか考えてなくて、いつもよりポンコツなメッセージ送ったと思う」
「いや、私もちゃんと確認しなかったから悪いので……」
「昨日大学行ってる最中にスマホ落としてスマホ死んだんだよね。買いに行ってる時間も無かったから連絡出来なかったし、更に紗綾の事不安にさせてごめん」
「……」
「これは完全に俺が悪い。同窓会の事ももっとちゃんと確認して言えばよかったし、いくらサプライズだからって隠すの下手すぎだし、俺」
睦月くんは私の頬に手を滑らせると不安そうな目を向けてきた。
「嫌いに、なった……?」
「私は別に……」
「怒ってる?」
「怒ってません……」
「嘘。だって紗綾、さっきから敬語だもん。目が合ってもすぐに逸らすし」
「それは……。だって、今から別れ話されるから……」
そう言うと睦月くんが固まった。
「別れ話……?」
「はい……」
「なんでそうなるの?」
「私の事、嫌いになったからですよね……?」
「なんで嫌いになるの?」
「え?だ、だって、同窓会行って新しい彼女が出来たのでは……」
睦月くんが頭を抱えて深い息をつく。
それから怒ったように私を見た。
「何見たの?」
「え……?」
「ドラマ?漫画?何かの番組?」
「?」
「何見たのか知らないけど、同窓会行って彼女作るって……そんなの彼女持ちの男がするわけないでしょ。浮気しようとしてる男でもない限り絶対に無いから。本命の彼女いんのに別の子と付き合う余裕ない」
「で、でも……っ。初恋の子とかいたら当時の思い出がよみがえって……」
「俺、紗綾が初恋だから。正直紗綾に出会うまでは恋とか知らなかったし」
「え……?」
考えていた回答と違っていて頭が混乱している。
私って睦月くんに遊ばれてるだけの女なのでは……?
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