114人が本棚に入れています
本棚に追加
お互いの用意が出来て、私達は睦月くんの家に向かった。
その時もずっと手を繋いだままで、睦月くんが私の事を離すことはなかった。
睦月くんの着替えも済み、私達はご飯を食べに近くのカフェへ向かった。
相変わらず周りの人を魅了している睦月くんの隣を歩くのがとても気になるけど、きっと気にしたらまた睦月くんに怒られてしまいそうなので黙っておく。
ていうか、こんなオシャレなカフェで朝ごはんとか初めて。
「紗綾」
「え!?」
「昨日は、ごめん」
「え?」
「凄く嫌な思いさせたのもそうなんだけど、そのあとに俺、紗綾の気持ちも聞かずに襲ったっていうか……。呆れてるんじゃないかなって……」
「ううん!ビックリしたけど……もとは私が睦月くんを疑ったのが悪いし。睦月くんが私を好きでいてくれるのなんて、ずっと分かってた事なのに。私が自信なくて卑屈になってた部分もあるから。睦月くんに教えてもらえてよかったよ」
「紗綾……」
私に笑いかける睦月くん。
それからゆっくりご飯を食べた。
「それにしても、どうして別れ話なんて事になったの?」
「……何かの番組で言ってたの思い出して。倦怠期になるとお互いの誕生日も忘れていってしまうって。しかも同窓会は初恋を思い出す人が多いみたいな事も言ってた気がして。それで、もしかしたら睦月くんも私と付き合ってるの嫌になったんじゃないかなって勝手に思い込んで。そもそも私、睦月くんと付き合ってるの遊ばれてるって思ってて……」
「遊びじゃないよ」
「分かってるよ。だけど、あまりにも睦月くんと私の世界は違いすぎるから。もっと自分に自信を持ちたいのに持てない自分に腹が立つし、それで睦月くんを傷つけてる自分が嫌いだし。本当に馬鹿だよね。ごめんね、睦月くん」
「……俺の事信じてくれた?」
「元々信じてるよ。あとは私が周りに何を言われても自信を持って『睦月くんの彼女だ』って言える事が出来ればいいの」
睦月くんは少し考えてから私の頭を撫でた。
ご飯を食べた後、睦月くんに連れられてジュエリーショップへやって来た。
結構有名なお店に中へ入る事をしり込みしてしまう。
「な、なんでここ?」
「紗綾にサプライズしたいって言ったでしょ?とりあえず中に入って」
睦月くんに問答無用で手を掴まれて中に入れられる。
綺麗なお店の店員さんが微笑みながらお出迎えしてくれる。
店内の煌びやかさに圧倒されていると、もっと奥の方へ連れて行かれた。
『お待ちください』と言われてフカフカのソファーに座って待っていると、白い手袋を付けた店員さんが何やら箱を持ってきた。
店員さんが睦月くんにその箱を渡すと睦月くんは私を見た。
「紗綾」
「え……?」
「誕生日、おめでとう」
そう言って箱を開ける睦月くん。
中に入っていたのは綺麗なピンクゴールドの指輪だった。
「え……」
「それから、俺と結婚してください」
一瞬、何を言われているのか理解するのに時間がかかった。
睦月くんから結婚を申し込まれている……?
え……?
「俺、まだ大学行ってるからすぐには難しいかもしれない。だからこれは結婚指輪じゃなくて婚約指輪だと思って。紗綾の未来を俺に頂戴」
こんなに嬉しい誕生日プレゼント、初めてかもしれない。
何も言えなくて、私の目から涙が零れ落ちた。
・
最初のコメントを投稿しよう!