113人が本棚に入れています
本棚に追加
/91ページ
「紗綾、明日休みだよね。この間言ってた」
「うん……」
「俺もバイト休みだし、明日は休校だから。一日一緒にいたいんだけど」
真っ直ぐ目を見てそう言ってくれる田原くん。
胸がキュッと締め付けられて、私は小さく頷いた。
「ありがと。ほんと、紗綾の事好き」
田原くんはそう言うと軽く私にキスをする。
こうやって自然と王子みたいな事言って王子みたいな行動取るって何事。
耐え切れなくなって私はベッドから出た。
「シャワー浴びてくるね!?」
「待って」
逃げようとしたのに手を掴まれて動きを止められる。
後ろから抱き着かれて真っ赤になって固まった。
「俺も一緒に行く」
「っ!?」
「できるだけ紗綾から離れたくない」
いつも彼はこうだ。
触れ合った後は必ず甘えたになる。
それがとても可愛くて、嬉しくて。
彼の彼女でいる事に不安を抱えていてもどうでも良くなる。
私はお腹に回されている田原くんの腕に触れた。
「ところで紗綾。いつになったら俺の事、名前で呼ぶの?」
「!!」
「『田原くん』なんて他人行儀な呼び方やめてほしい。俺達2年も付き合ってるし、これから先だって紗綾の事離したくないし、むしろ紗綾だって『田原』になるんだから」
「……っ」
このイケメンはさらっと結婚を連想させる言葉を言うんだから……。
いつまでたっても敵わない。
さっき電話をしたときに聞こえた女の子の声。
田原くんを名前で呼んでいて、とても羨ましかった。
だけど私にはそんな勇気ないし、そもそも私のようなブスが田原くんのようなイケメンを名前で呼ぶなんて許される行為ではないような気がする。
「恥ずかしい……」
「言って。じゃないと離さない」
ギュッとされて密着する。
田原くんの匂いがして頭がクラクラしそう。
「でも……」
「言ってくれないと拗ねるけど、いいの?」
完全にむくれている様子の田原くん。
これは言わない限り納得しないだろう。
私は観念して名前で呼ぶことにした。
「睦月くん……」
そう言うと後ろで軽く笑って、私の頬にキスをした。
・
最初のコメントを投稿しよう!