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睦月くんと一緒に住むようになって数日が経った。
相変わらず睦月くんは私の事を溺愛してくれて、お互い学校や仕事へ向かう前はキスしようという謎な決まりまで作られた。
嫌ではないんだけど、正直少し恥ずかしい。
顔を両手で覆って深いため息をつくと茂住くんに声をかけられた。
「どうしたの?睦月と何かあった?」
「茂住くん……」
「同棲して楽しんでるんじゃないの?」
「楽しいけど、好きな人と一緒にいると緊張しない?それが顔面国宝ともなれば尚の事」
「いい加減見慣れなよ。睦月悲しむぞ?」
そうは言われても難しい問題だ。
彼の強顔面を間近で見て何も感じない人なんてこの世に絶対に存在しない。
もう一度ため息をついて私は机に頬杖をついた。
「そういえば最近仁坂どう?」
「仁坂さん?別に何もないよ?」
「そうなの?」
「うん。気持ち悪くいくらい何も」
長期休暇の時に少しきつく言ったからか、不思議なくらい何も起きていない。
嵐の前の静けさ、とでも言うんだろうか。
睦月くんやベルちゃんや久篠くんからも何も聞かない。
むしろ睦月くんに近寄らなくなったと言っていた。
別の人に乗り換えたんだろうか。
それならありがたいけど。
「気を付けなよ、園原。あいつが簡単に引き下がるなんておかしいから」
「うん、ありがとう。何かあったら絶対に相談するから」
「絶対だからな?」
茂住くんに頷いて私は仕事に戻った。
いつものように仕事を終えて会社を出ると、会社の外に睦月くんとベルちゃんと久篠くんがいた。
「え?あれ?なんで3人が?」
「紗綾と睦月が同棲したって聞いたから、今日は4人で飲もうと思って」
ベルちゃんがコンビニの袋を私に見せる。
中にはお酒やおつまみが入っていた。
「家来るんだって。本当に迷惑」
嫌そうにしている睦月くんの肩を抱く久篠くん。
そんな久篠くんを嫌そうに引き離した。
「まぁまぁ。そんな嫌そうにしないでよ。俺が女の子の誘い断ってまでここに居るんだから感謝してよ」
「断らなくて良いじゃん。こっち来るなよ」
「はい!紗綾ちゃん!!睦月くんが僕をいじめてきます!!怒ってください!!」
相変わらず仲良しな二人に笑うとベルちゃんが私の隣に来た。
「寒い。早く家行こう」
「あ、ごめんね。私が早く出てくれば……」
「いいよ。仕事なんだから仕方ないし」
ベルちゃんは私の頭をポンポンとすると歩き出した。
私も一緒に歩き出すと睦月くん達も家に向かって歩き出した。
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