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家に着いて買ってきたものを広げて会話している3人を見ながら私は洗濯物や食器を片付けたり家の事を少しした。
手伝ってくれると言ってくれたけど丁重に断った。
お客様にさせるような事じゃないし。
それに私は3人が楽しそうにしているのを見るのが好きなのだ。
こうして綺麗な顔の3人が目の前で楽しそうにしているのを見るだけでご飯を何杯でも食べられそうな気がする。
あ、そういえば洗濯用の洗剤が切れてるんだった。
今日仕事終わりに買って帰ろうと思ってたから忘れてた。
私は睦月くんの横に行って小さな声で声をかけた。
「睦月くん」
「ん?」
「ちょっと買い物行ってくるね」
「え?今から?」
「洗濯用の洗剤が無くて。今日買うつもりだったからちょっと今から薬局行って買ってくる」
「もう暗いし、一人じゃ危ないから俺も行く」
「ううん、大丈夫。薬局、別にそんな遠くないし。洗剤一つ買うくらい時間かからないから。それにお客様を留守番に使うなんてダメだよ」
「こいつらなら大丈夫だから」
「ダメ。睦月くんはベルちゃんと久篠くんの相手してて」
心配そうな睦月くんに笑いかけて財布を手にして私は家を出た。
歩いて15分ほどの場所に薬局はある。
人通りもあるし、危ないような道じゃない。
本当に過保護だな、睦月くんは。
そう思いながら私は薬局にたどり着いて、いつも使っている洗剤を手にした。
帰り道を歩いていると、突然前に女の子が立ちはだかった。
その子を見て目を見開く。
だってその子は、今日茂住くんと話していた相手だったから。
「仁坂さん……」
「今日、ちょっと聞こえたんだけど。睦月くんと同棲してるってほんと?」
「はい……」
素直に答えると仁坂さんは何も反応しなかった。
下を向いているから表情は見えない。
暗いし、声も別にいつものように尖ってない。
なんだか不気味……。
茂住くんも『気を付けろ』って言ってたし、ここは早く立ち去るべきだよね。
「あの……、少し急いでますので……」
仁坂さんの隣を通り過ぎようとした瞬間だった。
「お前さえ居なくなれば……」
「え……」
腕を掴まれて歩道から道路へ投げ飛ばされる。
赤から青に変わったばかりの、交通量の多い道路。
そんなところに投げ出されたら……。
目に前が明るくなって、それが車のライトだと理解した瞬間、私の全身に強い衝撃が走った。
ああ、私轢かれたのか。
冷静にそう考えて、周りの声が遠くなって、全身の痛さに耐えられなくて、私の意識は途切れた。
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