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「安心して。貴女に怪我なんてさせない。彼女が本当に悪なのだとしたら、私達は全力で裁くから。私達警察を信じて」
不思議とその言葉は安心した。
私が頷くと睦月くんに強く手を握られた。
「田原さん。彼女を危ない目に遭わせます。大変申し訳ございません。だけど信じてください。もうこんな、悲しい事が起きないように絶対にしますから」
刑事さんの目をジッと見つめると睦月くんは困ったように微笑んだ。
「俺も、一緒に居ていいですか?」
「構いません。ただし病室には園原さん一人で。田原さんは私達と一緒に別室に」
「分かりました」
「彼女があの現場を見ていたのだとしたら、来るのは今日か明日だと思います。早く決着をつけたいと思っているはずでしょうから」
「はい……」
「ずっと居ますから、安心してください」
そう言って刑事さんと睦月くんは部屋を出て行った。
一人きりになると途端に緊張してきた。
仁坂さんが入ってきたらどうしたらいいんだろう。
引きつった顔なんて見せたら一瞬でバレてしまう。
ちゃんと出来るだろうか。
怖がらずに、普通に話せるだろうか。
そう思いながら私は深呼吸をした。
それから数時間後。
病室に一人の女の子がやって来た。
その人はずっと待っていた人、仁坂さんだった。
刑事さんの言った通りだ。
緊張して喉が渇く。
それでも私は仁坂さんに笑顔を向けた。
「音夢ちゃん!」
記憶が戻る前のようにそう呼ぶと仁坂さんは嫌そうに顔を歪めた。
「やめてよ、馴れ馴れしい呼び方するの。もう記憶戻ってるんでしょ?」
「え?」
「私、見たよ。警察の人と一緒に事故現場行ったの。随分取り乱してたけど」
「あー……急に頭が痛くなって。でも、何も思い出せなかったの」
「は?嘘つき」
「ほんとだよ。それなのに急に車を見たら怖くなって……。私ってどんな轢かれ方したのかな」
困ったように笑うと仁坂さんは疑ったように私を見てからため息をついた。
「まあ、別にどっちでもいいけど。どうせ紗綾ちゃんには消えてもらうし」
「え……」
「紗綾ちゃん、貴女があんまりにも遅いから私が強制的に睦月くんとお別れさせてあげる」
そう言って仁坂さんは私に手を伸ばした。
恐怖で固まっていると仁坂さんの手を掴む人が現れた。
その男の子は以前睦月くんと一緒にいた男の子。
睦月くんと仲良く話していた男の子だ。
「おい!もういいだろ!?そこまでやんなよ!!」
「離して」
「睦月の彼女を殺しても睦月はお前を選ばない!そんな事分かってんだろ!?」
「うるさいな。あんたがあの時救急車なんて呼ぶからこの女が生きてるんでしょ?あの時に死ねば良かったのに」
「いい加減にしろよ!!」
仁坂さんの両手を掴んで私から引き離す男の子。
仁坂さんは男の子を睨んでいた。
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