学生王子に翻弄される毎日は

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出掛ける準備をして一緒に買い物へ行く。 相変わらず睦月くんは周りの目を集めるな。 背も高くておまけにイケメン。 一人にすればスカウトされてるし、本当に別の世界の人間みたい。 でも、もう卑屈にならないって決めた。 彼の彼女だってちゃんと言えるようになるって決めたから。 パンケーキを食べるためにカフェへ行く。 目の前でパンケーキを食べているだけなのに、どうして睦月くんはカッコいいんだろう。 「本当に美味しい」 「バイト先の人の事疑ってたの?」 「だってその人、なんでも美味いって言うから」 「その人は人生楽しく生きてるんだね。美味しいものを見つけるの上手なのかも」 「紗綾って本当にいい子」 「そんな事ないよ。でも、こんな美味しいお店教えてもらえてよかった。また来たいね」 「うん」 パンケーキを食べ終えて街をぶらぶらして、そして私達はマンションに帰ってきた。 本当に何気ない事なんだけど、これが嬉しくて。 周りのカップルからしたら物足りないかもしれないけど、私には充分だった。 今でもたまに思い出す。 道を歩いていると、通り過ぎる車にビクッとしてしまったり。 あの車のライトを思い出して気持ち悪くなったりしてしまう。 そんな私を心配していつも睦月くんは一緒に歩いてくれるのだ。 でも甘えてばっかもダメだって分かってる。 だからいつも私は小さく息をついてしまうのだった。 次の日。 夕方から睦月くんと映画に行く約束をしているので、午前中は掃除をしようと動いていた。 テーブルの上を見れば睦月くんのスマホが置いてある。 あれ? 睦月くん、忘れて行ってる。 大丈夫かな。 バイト中はスマホ使わないからいいと思うけど、休憩時間とか暇じゃないかな。 それに何かあった時の連絡手段がなかったら睦月くん、困らないかな。 一人で行動したら睦月くんに怒られるけど、これは緊急事態だと思う。 久しぶりに一人で外に出るのは緊張するけど、もう怖い事は起きないのだ。 そう信じて私は睦月くんのスマホを手にした。 一人で外に出て周りを確認する。 人間不信なわけじゃないけど、通り過ぎる人に少しビクッとしてしまった。 早く届けに行こう。 睦月くんのバイト先は駅前にある。 駅前まで行けば大丈夫だ。 早足で駅前に急ぐ。 もう仁坂さんはここに居ないのに、なんだか居るような気がしてドキドキしてしまうのはどうしてだろうか。 何とか無事にバイト先まで辿り着いてホッとする。 中に入るとカウンターに睦月くんがいた。 別のお客さんの接客をしているので私には気づいていない。 別の店員さんが笑顔で私に声をかけてくれた。 「いらっしゃいませ」 「あ、あの……」 「はい、何にいたしましょう?」 「いえ、その、コーヒーを飲みに来たわけではなくて……」 私はポケットからスマホを取り出した。 でもちょっと待って。 『これを田原くんに』って、ちょっと気持ち悪くない? ・
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