学生王子に翻弄される毎日は

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手を繋いで一緒に映画館に向かう。 睦月くんの顔を見たら安心して、知らない場所で寝てしまうなんて。 なんて恥ずかしい。 自分のしたことが恥ずかしくて睦月くんの顔が見れない。 「紗綾、大丈夫?」 「え?」 「いや、寝てたから疲れてるのかなって。映画観て大丈夫?」 「うん、大丈夫。私が観たいって言ったんだし」 「別の日でもいいんだけど……」 「ううん、大丈夫。心配してくれてありがとう」 そう言うと睦月くんが微笑んだ。 映画館には沢山人が溢れていた。 休日だし、私の観たかった映画って結構期待されてたし。 今日が上映開始日だからか、席は満席状態だった。 人気の俳優陣が出ているその映画は話もとても面白かった。 この映画の原作は小説だ。 読んだことがあるけど、内容がとても私と睦月くんに似ていて共感できるものばかりだったのだ。 学生の男の子と恋愛をする映画。 二人は幸せなのに、お互いの時間が合わなくてすれ違ってしまう。 そういえばすれ違うって事はあまりなかったかもしれない。 私と睦月くんは。 私が勝手にネガティブに考えて睦月くんに怒られてるだけだし。 そう考えると情けないな、私。 映画を見終えると睦月くんと手を繋いで家まで帰った。 晩御飯を睦月くんと一緒に作る。 睦月くんは映画の話をした。 「あの映画、何となく共感出来た」 「睦月くんも?」 「うん。まあ、あの男は彼女を大事にしなさすぎだと思うけど」 「大事だけどすれ違っちゃったんだよ。仕方ないよね、人の気持ちなんて言わないとわからないんだから」 そう言って野菜を切っていると、不意に睦月くんに手を掴まれた。 「睦月くん?危ない……」 「紗綾はちゃんと気持ちを言うようになったね」 「え?」 「昔は俺の事も疑って、自分の気持ちも言わずに自己完結してたのに」 「あー……、それが一番良くないって分かったから。それに睦月くんにあれだけ怒られたらいい加減学習するよ」 クスクス笑うと睦月くんも笑った。 「俺はこの先もずっと紗綾と居たい。紗綾がどれだけ俺と離れたくても離してあげれないから、ごめんね」 「私から離れる事はないよ。この先ずっと、私は睦月くんの事が絶対に好きだから」 この先もずっと、この幸せが続くって信じてる。 私達は微笑みながらキスをした。 それからも、私達の幸せで楽しい毎日は続いた。 記念日には必ず二人でお祝いして、休みの日にはベルちゃんや久篠くんと一緒に遊んだり。 そうやって過ごして、睦月くんは大学を卒業して有名企業に就職した。 ・
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