113人が本棚に入れています
本棚に追加
/91ページ
睦月くんは顔を上げてテレビを見る。
それからショッピングモールを見て「あ」と言った。
「この間友達と一緒にここ行った」
「え?」
「紗綾の好きそうな場所、何個かあったんだ。今度連れて行きたいって思ってたんだけど、今日一緒に行かない?」
そう言われて固まる。
それって、デートに行くってことだよね?
友達に会うかもしれないのに、私を連れて人通りの多い場所に行こうって事だよね?
青ざめていると睦月くんが首を傾げた。
「何?その顔」
「だ、だって!睦月くんはいいの?」
「いいから誘ってるんだけど」
「そうじゃなくて!私みたいなのと一緒だと、ほら……」
言い淀むと睦月くんは「ああ」と言った。
「付き合いだした頃の事言ってる?高校一緒だった奴らに馬鹿にされて紗綾泣いた時」
「……っ」
「そのあと分からせたつもりだったんだけど、まだ分かってない?初めて紗綾の事抱いた時と同じようにしようか?」
「っ!?」
真っ赤になって睦月くんから離れる。
「なんで逃げるの」
不機嫌な睦月くん。
でも私はそれどころじゃない。
「も、もう分かったから………っ」
「本当に?だったら今日、ここに行く?」
「うん……」
頷くと睦月くんはふわっと笑った。
ご飯を二人で食べて用意をする。
あまり目立たないような恰好を選んだら地味になってしまった……。
相変わらず色気も何もない恰好。
オシャレでカッコいい睦月くんの隣を歩くことが恥ずかしい。
小さくため息をついて睦月くんと一緒に家を出る。
周りの人が私達を見て行っているような気がして顔を上げられない。
睦月くんはただでさえ人目を引く。
綺麗な顔立ちだし、歩き方だってスマート。
そんな隣を歩いているのが私みたいなブスで本当に申し訳ない気持ちでいっぱい。
そんな私の気持ちなんてお構いなしに手を繋いでくる睦月くん。
イケメンは何もかもイケメンだから困る。
ショッピングモールに着くと沢山の人で溢れていた。
「はぐれないようにしてね」
「うん」
更に強く握ってくれる手。
大きくて安心する。
「あ、ほら。あそこのレモネード、超美味いの。一緒に飲もう」
「うん」
オシャレで可愛い見た目のレモネード店。
カップルとか女の子が並んでて、なんだか私が並んでもいいのか迷ってしまう。
写真を撮って、可愛く笑い合っている子達を見ていると自分とは違う次元に生きているんだなと実感する。
レモネードを二つ睦月くんは買うと一つを私に渡してくれた。
「ありがとう」
「飲んでみて」
一口飲んでみると、甘酸っぱい炭酸が口の中に広がった。
「炭酸だ」
「ソーダ入りの買った。これが一番美味い」
新しいことを沢山知っている睦月くん。
きっと大学でいろんな人から教えてもらうんだろう。
・
最初のコメントを投稿しよう!