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「今日は母さんが無理矢理連れてきてごめん。
紗和に嫌な思いをさせたんじゃないかって、仕事中ずっと考えてたんだ」
「嫌な思いなんてしてないよ。
それより、ご両親の前で色々話してしまってごめんね。
ご両親に不快な思いをさせたんじゃない?」
武瑠を見ると、キョトンとした顔をしている。
「それは大丈夫。
紗和の事、いい子だって誉めてたし。
俺は『馬鹿な事して』って、親父から叩かれたけどな」
武瑠は頭をさすりながら、ハハハと笑った。
「大丈夫?」
「うん。料理人って力が強いから滅茶苦茶痛かったよ。
でも、紗和を傷つけた罪はこんな痛みじゃ償えないよ。
ごめん。
俺、今日萌乃から聞くまで、紗和をどれだけ傷つけたか全然分かってなかったんだ」
悔しそうに唇を噛む武瑠の頬に、そっと手を当てた。
「唇、切れちゃうよ」
武瑠が驚いて唇を噛むのを止めた。
「確かに私はすごく傷ついて、男の人が信じられなくなった。
だけどね、私も悪かったの。
もっと周りを頼れば良かった。
そしたら、もっと早く立ち直れてたと思うの。
武瑠に振られたって言うのが恥ずかしくて、一人で抱え込んだのがいけなかったんだ」
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