物書きの血

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私は開いたページを指さした。 「これ、ペンネーム。お父さんの名前をちょっと拝借した。」 久しぶりに『お父さん』なんて口にして照れくさくなる。 「恋愛小説なんかってバカにするかもしれないけどさ。これだって、人の心を揺さぶることは出来るから。」 評論と恋愛小説じゃ土俵が違い過ぎて勝負にもならない。 それでも、もっと早く素直になっていたなら、少しは認めてもらえただろうか。 瞼の裏がじんわり温かくなった。 「ねえ。生きててくれなきゃ勝てないよ。」 遺影の父は優しく微笑んでいた。 END
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