指環

「まさか、なくしたとか云わないよな？」

……ぎくり。

「ま、まさか。
最近、太ったみたいで。
ちょっときつかったから。
結婚指環も抜けづらいくらいだし」

「ふーん」

じーっと私を見つめる夫に、掌が汗ばんでくる。

もしかして、バレてる？

「……冗談だ。
そんな顔するなって」

「……うん」

にっこりと笑った夫にほっとため息。

……でも、正直に話してしまえなかったことを後悔してた。

翌日から、子ども部屋を中心に家の大掃除を敢行した。
家の中のどこかに転がっているはずだと信じて。

一応、愛里奈には聞いてみたものの、まだ四歳児。
明確な答えなど出てくるはずもなく。

ひたすら、大掃除。