指環

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「……うん」 珍しく、開けることをせかされて箱を開ける。 そこに入ってたのは……なくしたはずの、婚約指環。 「奈々子がここんとこ、探してたのってこれだろ?」 「なんで……」 最近の、夫のにやにや笑いの理由がわかった気がする。 私が必死に指環を探してるのがわかってて、黙ってたから。 「風呂はいるとき、愛里奈の服のポケットから出てきた。 あとでなんでか聞こうと思って忘れてたのもあるけど、……おまえが隠すから」 「……ごめんなさい」 ……そうですね。 素直になくしましたって告白しなかった私が悪い。 「隠し事、するな。 俺だって気分が悪かった」 「……はい」 ……はぁーっ。 うなだれてしまった私に、大きなため息。 涙目で見上げると、夫はにっこり笑った。 「云いづらかったのもあるだろうけど。 今後、こういうことのないようにな」
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