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「それです。どうして、目が治ったのか。未だに不思議なのですよ。幾ら神田明神の平将門公だとて、眼病に効くと言う話は聞いた事が有りませんし」
杉下のいうとおり、神田明神は首から上の疾病に御利益が在ると言われる。
しかし、目が治ると言った事象は確認されていない。
小石川の蒟蒻閻魔なら享保年間に前例は在るものの、この一回こっきり。
とてもじゃ無いが、目玉を二つも差し出すと言うのは神様としても無いと杉下は考えている様だ。
だが、主馬は一度死に。
ダンピールからヴァンパイアとして復活している。
到る過程は違うが、田嶋と同じヴァンパイアになると言う結果を得ていた。
「お、いらっしゃいましたか」
「お待たせしました。では、窺いましょうか」
勿体振った様な言い方をするが、これが杉下と言える。
「おろくは?」
「殺られたのは、こちら。札差の主で藤兵衛。番頭の忠蔵、手代の弁吉に丁稚の小弥太。この四人ですな」
四人だけと言うのも妙である。
大概、商人は妻帯者。
武家、侍と同じく嫁を迎えるのが当たり前の職業だとも言えた。
妻帯者で無い商家は余程に貧乏か、それとも男好きか。
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