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「傷は平突き、滅多斬りにしてンのは臆病だからかねェ? 仕返しとか、証言されたら困るからッて」
「恐らくは。こうして死体を滅多矢鱈に傷付けまくるのは、臆病な者の特徴ですし……」
現代でも、こうした死体の壊し方を行うのは臆病で。
警戒心の強い者が残虐とも言える、傷の多い殺し方をする。
「それだけで無く、懐中の物も盗られてるのでは在りませんか?」
「ご明察ですな。ええ。懐を探した様な痕跡が残ってました。それが財布か、蔵の鍵かは不明ですが……」
確かに、懐の物が鍵か財布かは判るまい。
せめて、盗まれた物が判ればと愚痴りたくもなろう。
「米ざ……。またですか……、南番所の与力様……」
こんな言い方をするのは、一人しか居ない。
「よう、北番所の伊丹。久し振りだな?」
「会いたくも無かったんですけどね……。早く帰って下さいませんか……?」
何とも毒の在る、嫌味を伊丹は言う。
「そうは行かねェ烏賊の金玉ッてな。こちとらァ当番方だ。どこそこで殺しと在ッちゃ、北と南も関係無く与力も同心も出張らねェ訳には行くめェよ」
「それは、そうと。伊丹さん、そちらの見廻り区域は別だったのでは?」
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