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「じゃあ、早由香さん。この調子で次の“お客様”のお相手も、頼みますねェ」
「ええっ!?い、今ので終わりじゃないんですか!?」
「おや、お忘れですかァ?ワタシは最初に“顧客の皆さま”と、お伝えしたはずですよォ」
「そ、そう言われれば……」
「皆さま、手ぐすねを引いてお待ちしております」
いやな物言いと共に仮面の男が指を鳴らすと、前と同じように扉が出現した。
「さあ、どォぞ」
「あ、あの……」
「はい?」
「身体を洗わせてもらってもいいでしょうか?……粘液でぬるぬるしていて、気持ち悪いんです……」
「あ、これは失礼致しましたァ。確かにそのままでは、いい気分ではないですよねェ」
男が再び指を鳴らすと、早由香の身体が光に包まれる。そして、光が消えると、肌についていた粘液が消え、汚れていた衣装も元通りになっていた。
さらにくすぐりで消耗していた体力も回復したようだ。
「あ、ありがとうございます……(衣装はこのままなのですね……)」
「いえいえ、こちらこそ気が回らず申し訳ありませんでした。さァ、気を取り直して、行ってらっしゃいませェ」
「……やっぱり、断る選択肢は……」
「(^ω^)」
「ないんですね……」
腹が立つ笑みを浮かべる男に、早由香は大きくため息をつき、現れた扉のノブに手をかけたのだった。
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