8人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
早由香が扉を開けると、そこは遊具や砂場などがある広場だった。
「ここは……公園なのでしょうか?」
先ほどまでの洞窟とは一変して、現代的な空間に驚く早由香。
「わあ~、キレイなお姉ちゃんだ」
「えっ?」
どこからか声はしたが、姿が見えない。
「上だよ、お姉ちゃん」
その言葉に反応して、早由香が上を見上げると、そこには黒のパーカーと黒の半ズボンを着た童顔の少年が宙に浮いていた。
長い前髪が目元を完全に覆い隠していて、表情までは窺えない。よく見ると、背中に黒くて小さな悪魔の翼が生えていた。
「あ、貴方は?」
「ボク、キュムっていうんだ。よろしくね」
キュムと名乗った子どもは、早由香の目線の高さまで降りてきて、ニコーっと歯を見せて笑った。
(この子が、次の“お客様”でしょうか?)
「ねえ、お姉ちゃん。ボクのこと、こわい?」
「えっ?」
「ボク、“あくま”なんだよ。こわいでしょ~?」
「えっと……」
キュムは、早由香の半分くらいの背丈だ。外見的には、幼稚園児がハロウィンのコスプレをしているようにしか見えない。
早由香が微妙な反応をしていると、
「なーんだ。ちっともこわがってくれないのか。ボクはお姉ちゃんみてると、ドキドキするのに」
「ええっ?ど、どうしてですか?」
「だってお姉ちゃんは、みこさんでしょ?みこさんとか、シスターとかって、あくまにとっては、こわいそんざいだもん」
「あ、いえ……こういう格好をしているだけで、私は巫女では……」
「そうなの?スゴくにあってるから、ほんものかとおもった」
(やはりこの格好だと、誤解されますよね……)
ゲルグの時と同じようなやり取りに、早由香は人知れずため息をついた。
「やっぱりドキドキしちゃうな……とってもおいしそうだし」
最後にボソッと気になるセリフを言うキュム。
「えっ?何が言いましたか?」
「ううん、なんでもないよ。それよりお姉ちゃん、ボクとあそんでよ」
最初のコメントを投稿しよう!