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「……こ、これでいいですか?」
結局、なし崩し的にキュムを抱くことになってしまった早由香。まだ頭がふらつき、足も痺れた感覚が残っているので、上半身を壁に寄りかからせた状態で抱きしめている。
「……………」
先ほどから、キュムは黙って早由香の胸に顔をうずめている。
(何か……黙っていられると、それはそれで落ち着きませんね……)
「……やさしいね、お姉ちゃん」
「えっ?」
「ボクをさっきみたいに、ちからまかせじゃなくて、そっとだきしめてくれてる」
「そ、それは……」
本当は精気を吸われて力が入らなくなっているだけなのだが、キュムはそれに気づいていない様子だ。
「うっ……!?」
「た、だいじょうぶ、お姉ちゃん?」
「ちょっと、頭がクラっとして……」
「……ボクが、せいきをすいすぎちゃったからだ。ちょっとまってて」
キュムが抱いてもらったまま、早由香の身体に手をあてて、意識を集中させると、淡い光が彼女を包み込んだ。
「どう?」
「えっ……あ、はい。楽になりました」
めまいも足の痺れもすっかり取れ、早由香の顔色も良くなった。
「よかった……さっき、お姉ちゃんからとったせいきを、ぜんぶかえしたんだ」
「あ、ありがとうございます……」
しかし、ここで早由香は疑問に思った。
「でも……どうして私の精気を全て返してくれたのですか?」
もし、自分をただ生かしておくだけなら、奪った精気を全て返す必要はないはずだ。にも関わらず、キュムは早由香に精気を全返却した。
「このままだと、お姉ちゃんがしんじゃうとおもって……しんじゃったら、ボク、こまるんだ。だって……」
「だって?」
「……ボク、お姉ちゃんのこと、すきになっちゃったから」
「え、ええええっ!?」
彼がぼそぼそと呟いた言葉に、早由香は思わず大声を出してしまった。
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