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実は早由香は今まで異性とデートをしたことがない。このように男性と差し向かいでお茶を飲むというのも、初めての経験なのだ。にも関わらず、今、自分は普通にお茶を飲んでいる。
そんな自分の反応に少し戸惑ったが、
(……何か、この世界に来て、初めて一息ついた気がしますね)
ミントティーの爽やかな風味に、早由香はほっと一息つく。考えてみれば、ここに来てから全く気の休まる暇がなかった。が、レスターがじっと見ているのに気がつき、
「な、何を見ているんですか!」
「いえいえ。ようやく早由香さんがワタシの見たかった顔になってくれたので、つい嬉しくなって見とれてしまいましたァ」
「っ!?」
レスターの言葉に、早由香は再び顔を赤くする。
「さァて、早由香さんの緊張も少し緩んだと思いますので、早速お願いを聞いて頂きましょうかァ」
「……………っ」
覚悟は決めていたつもりだったが、そう言われてしまうと、早由香は身体をこわばらせた。何しろ目の前の男は、これまで“お客様”と称して様々な“魔物たち”の相手をするように強要してきた張本人だ。いったい何をされるというのか。
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