顧客その4:異世界の支配人 レスター

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「えっと……これは……?」  早由香は目をパチクリさせる。 「おや、分かりませんかァ?早由香さんの足を揉みほぐしているのですよ」 「そ、それは分かりますが……」 「早由香さんがお相手した皆さんは全員、貴女の足をいじめていましたからねェ。少しは労うことをしなければ申し訳ないです」   彼に言われて、早由香は思い返してみた。ゲルグにはくすぐられる。キュムにはくすぐられた上に吸われる。メデュには舐め散らかされる…… (ろくなことをされてないですね……)  ため息をつく早由香。  「あの……これも貴方の夢、なのですか?」 「はァい。貴女のような美しいおみ足を持つ女性に白のニーソックスを履いて頂き、そして揉みほぐすこと。これも長年の夢の一つでしてねェ」  考えてみれば、早由香が身につけている青色のミニスカート巫女服と白のニーソックスもレスターが着せたものだ。 (この人も、足フェチなのでしょうか……あ、あれっ?……そう言えば……)  そう。何の気なしに足を揉んでもらっているが、重度のくすぐったがりの早由香が、全然くすぐったく感じていないのだ。むしろ、 「いかがですかァ、早由香さん?」 「え、あ、はい……その……き……っ……!」  気持ちいいと言ったら、レスターにからかわれると思い、早由香は口をつぐんだが、 「正直に感想を仰って結構ですよォ」 「気持ちいい……です」  結局、正直に伝える。すると、 「それは重畳です。暫く揉みほぐしますので、どうぞゆるりとして下さいねェ」  早由香は不思議な感じを受けた。  この男は小馬鹿にするような口調にも関わらず、揉み方はとても丁寧で優しく、力加減もちょうどいい。それに揉みほぐしている時の顔も、本当に楽しそうだ。長年の夢という言葉は、嘘ではないのだろう。 (普段の私なら、素性の知れない方に身体を触らせるなんてことはしないのに……きっと、この世界に来てから、おかしな生き物たちに振り回されたので、自分の感覚がおかしくなってしまったのでしょうね……)  早由香はそう思うことにした。
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