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それから暫くの間、レスターは早由香の大腿を枕にしたまま、何をするでも、何を言うでもなく、ただ横になっていた。
(……寝ては、いませんよね?)
いい人とは言えないが、凶悪な人でもないのかも……と、彼のことを判断した早由香は、意を決してレスターに言うことにした。
「……あの、そろそろ、もとの世界に戻して頂けませんか?この後の予定もありますし……それに、店主さんも心配していると思うんです」
ところが、横になっていたレスターから返ってきた言葉は、意外なセリフだった。
「……もう少しくらい待たせても、“彼”なら平気だと思いますよォ」
「えっ……店主さんのこと、知っているのですか?」
「はァい。ワタシは“彼”のことも、よォく知っているんです……ずっと前からねェ」
さらにレスターは、早由香の想像を遥かに越えたことを口にした。
「“彼”……貴女のことが大好きなんですよォ」
「っ!?と、突然、何を言い出すんですか!?」
早由香の頬がこれまでにないくらい、赤く染まった。
レスターは、やおら立ち上がり、彼女に背を向けて後ろで手を組み、まるで昔話でも語るように話し始める。
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