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(店主告白中)
俺は初めて早由香ちゃんがうちの店に来てから、ずっと気になっていたんだ。
ただ、俺はしがない個人書店のおっさんだし、早由香ちゃんみたいな若くて綺麗な娘とは釣り合わないと思ってた。
そんなある日、うちの店にあの本を持った一人の男がやって来たんだ。「この本に物語を書いて入り込むと、書いた物語を体感することができる」って言い残して、そいつは店を出ていった。
胡散臭い話だと思ったけど、自分で一回試してみたら、本当だったんだ。
それで、俺は恐ろしいことを考えてしまった。早由香ちゃんを自分の妄想物語に連れ込んで、悪戯をしちゃおうと思ったんだ。
いけないことだというのは、充分理解していた。でも、自分の欲望を抑えられなかった。
もちろん、自分なりのルールは作ったさ。早由香ちゃんの身体にケガをさせるようなことはしない。そして、本当に危なそうだったら、俺が物語に介入して助けるって。仮面をつけて、別人格を装ってずっと見守ってたんだ。
でも、早由香ちゃんが俺の前で泣き出したとき、もう悪戯をするのは止めようと思った。それで、せめてものお詫びに、お茶とマッサージをしてから、もとの世界に帰してあげようってさ。
だけど、どうしようもない男だよな……ここでも欲が出てきた。膝枕してもらいたいっていうのと、早由香ちゃんは俺のことをどう思っているのか聞き出したいって。
必死になって自分の気持ちを伝えてくれた早由香ちゃんには、心から感謝してるよ。……結果として、俺はその気持ちを踏みにじる真似をしてしまったけどな……
(店主告白終わり)
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