8人が本棚に入れています
本棚に追加
「で、でもさっき予定があるって言ってたんじゃ……」
「その予定はキャンセルします。もっと大切な予定ができたので」
「いや、でもまだ営業中だから……」
「お店の札が、すでにcloseになっていますよ。今日はもう閉店にするのですよね?」
(……そ、そうだ……本の世界に入った早由香ちゃんを見守るのに専念するために、さっき閉めたんだっけ……)
「早く用意をしないと、店主さんが私を無理やり(異世界に)誘拐して、(自分の作った魔物を使って)いやらしい悪戯をしてきたって、SNSで拡散しちゃいますから」
早由香はプイッとそっぽを向いて、自分のポシェットからスマートフォンを取り出して見せる。
「ちょっ!?さ、早由香ちゃん、さらっとシャレにならないこと言わないで!!……って、早由香ちゃん、性格変わってない!?」
「店主さんのせいですよ。私の心と身体は、店主さんの作った悪い魔物たちのせいで汚されてしまいました。だからきっと、私はおかしくなってしまったんです……」
店主に背を向けたまま、両手で自分の身体を抱きしめ、悲しげな声を出す早由香。だが、これは彼女のささやかな“仕返し”の演技だ。
そうとは気づかず、負い目がある店主はオロオロしてしまう。
「わ、分かったよ。今、準備するから、待ってて」
店主は、どたばたと店の奥に駆け込んでいく。
最初のコメントを投稿しよう!