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足のそばを何かが通った。
その正体に気付いてしまった僕はなんの拍子か反動か、先輩の手を強く引いてしまう。
「わ」
驚いた顔をする先輩が傾いた姿勢を保てるはずも、立て直せるはずもなく、僕へ向かって倒れてこんできた。
僕の方もいくら男子高校生であるといっても、平均的な体格のどちらかといえば運動部系よりも文化部寄りで、更にインドア派であるので……。
言い訳はこのくらいで。非力とまでは言わないが、こんなに細い先輩であっても受け止められるほど筋力は育っていないし、そもそも自分が飛び上がってしまった側なので。
僕を下敷きに、ふたりで冷たい床に倒れこんだ。
湿り気を帯びた埃が一瞬舞い、制服や頭に白いものがくっつく。そして僕の胸の辺りには先輩の顔がくっついていた。
「怪我、ないですか?」
体を起こそうにも先輩が全身で乗っかっているようだ。動けないまま問いかけた。すると。
「うぅ、腕が折れたみたい」
「えっ!」
確かにあんな細腕だ。床に変なつき方をしたら折れてもおかしくない。
しかし先輩への心配もそこそこに、僕は一瞬意識を飛ばしかけていた。
ふと横を見たその先に、いたのだ。
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