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チュー。
「あぁ、物音はキミの仕業ね」
腕を折ったらしい先輩がいやに冷静な口調で、僕の胸を枕代わりにして横を見て、そう言う。
「ちょ、聞いてません」
「あら、ずっと前からいたのよ。ネズミってこういう所が好きなのね」
床に押し倒された状態のまま動けない僕は、視界の中でただ一点、小さな野性動物を見ていた。
僕は、コイツだけは苦手だ。
「きっとどこかに隙間があって、そこから入ってくるのね。噛まれるとちょっと困るけど、気にしなければなにもしてこないわ」
いやだ、無理だ。
気にしなければ?
そんなの先輩に唇を奪われるのとは違うんだから。
「もしかして、ネズミがこわいの?」
先輩の手が僕の胸元を制服の上からそっと這う。
「だったらなんですか」
先輩の手を通して逆に伝わる僕の鼓動。
「こんなに小さいのに?」
顔をあげた先輩が僕の横顔を見る。
「大きいも小さいも関係ないです」
僕の目は、ただ一点を凝視して動けない。
硬直する僕の体の上で先輩が動く。
「人の心臓ってこんなにも激しく動くのね……忘れていたわ」
先輩が僕の胸の上に、片耳を押し付けていた。
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