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先輩の言っている意味が、わからない。
僕の思考回路は変な回線で回ったらしく、とある閃きを口にした。
「大きな声を出したら、どっかに行ってくれますかね」
「そんな事しなくても、放っておけばいなくなるわ」
「無理です」
のんきにチューチュー鳴きながら、キョロキョロする姿にぞっと背筋が震える。
なんか色々限界に達しそうになった時、不意に思い出した。
「先輩、腕は……?」
折れたみたいと言ったわりに、痛がる様子がない。そう思っていたら、目の前に折れた腕を見せつけられた。
ポッキリいってる。
血は出ていない。
ポッキリいってる。
確実に折れてる。
「こんなのは、こうやってくっつければ治るわ」
治るもんか!
反対の手でぐいっと元通りにした先輩が、僕を見下ろし微笑んだ。
「君にだけ見せた私の秘密よ、誰にも内緒なんだから」
そう言って、今しがたくっつけたばかりの手を何事もなかったかのように動かし、僕の両目をふさぎ、唇もふさがれた。
すべてから解放されると、そんな間においとましたらしくネズミの姿はなくなり、冷たい床が人肌の温度になるまで僕は動けなかった。
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