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どうあがいても、いや、あがく気力さえ湧かないほど、僕は先輩には勝てない。自覚している。
いくら僕が鬼と化し、儚い命を無数に散らしていたとしても、小さな野性動物には尻尾を巻いて逃げるように。
「……キス、上手になってきたわね」
蕩けそうな瞳で僕を見下ろし、微笑む先輩。
「もっと、上手になってね」
するりと僕の頬をすべる先輩の指は、ヒヤリと冷たい。
「僕に、どうしろって言うんですか……」
先輩のキスで腰が抜けたとか、絶対言わないけど。
わざわざ床スレスレまで屈んで、僕に覆い被さり、耳に息を吹きかける先輩は、普通の人間じゃない。
「もちろん、私をころしてほしいのよ」
そんな事、できそうにない。
*end*
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