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まぁ僕だって先輩に"殺人鬼"なんて呼ばれたりするから、似たようなものか。
「ねぇ、いつまでそうしているの?」
「なにがですか」
第二図書室に入り扉を閉めて視界が真っ暗になったところで、僕は入学してからの事を思い返していた。
先輩の声で我に返り顔をあげる。
「ここに来てから、ずっと君の指は唇をなぞっているわ」
気付くと僕の右の人差し指が、顔の近くにある。
「こんな誰も来ない部屋に私と二人きりだからといって、ムラムラされても……困っちゃうわ」
「ム……してません!」
右の人差し指を握りつぶす勢いで拳を握った。
だいたい今日だって、さっき先輩も言ったように呼ばれていないのだ。なら家に帰ればいいのに、何故か足がこっちへ向いてしまった。
まるで部活でもするかのような、日常の一部をなぞったような行動だった。
別に用もないし、今更だけど帰ろう。そう思い「急用を思い出したので、帰ります」と呟くように吐き捨てて、先輩に背中を向けた。
「せっかくだから、お茶でも飲んでいかないかしら」
「でも」
「ひとりで飲んでも、味気ないのよ」
先輩が微笑んでいるのが、見なくてもわかる。
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