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く、悔しいけど、おいしい。
でも言ったら負けだ。
あっという間に飲み干して、予感していたままに一息ついて、そっとカップを置く。すかさず先輩の手によりカップは温かなお茶で満たされた。
負けというなら、僕は呼ばれてもいないのにここに来てしまった時点で負けを認めざるを得ないのだろう。
別に勝負をするためにここに来ている訳ではないけど。だいたい、なんの勝負だ。
でも、目の前でお茶を楽しみながら本のページをめくる先輩を眺めていると、こんなにも完璧な人は他にいるだろうかと思いたくなる。
けしてすでにそう思っている訳ではなく、まだこの人が完璧だとは言っていない。
長いまつげを伏せて一心に暗闇に並ぶ活字を追い、口元は自然に無理なく微笑んで。
細い指先が脱け殻になった紙の束に命を吹き込むように、一枚一枚とページをめくる。その度に冷えきったこの部屋の空気が震えだす。
華奢な体と控えめな胸部、細い足は揃えて並び、小さな靴はかかとに隙間があいている。
こんな先輩のどこに、僕を押し倒し唇まで奪う力があったのか。
これでは僕が非力みたいじゃないか。
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