先輩がどんな人なのか調べるうちに、気付いた。

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二杯目のお茶を半分ほど飲み、先輩の観察を無理矢理終わらせた僕の聴覚が、かすかな物音を聞き取った。 「なにか、音がしたわね」 顔をあげた先輩と暗闇に馴れた視界で目があった。先輩にも聞こえたようだ。 「この辺ではないですね、奥ですか」 「そうね」 湿気った音を立てて読んでいた本を閉じた先輩は、本をテーブルに置くと立ち上がった。 「見に行きましょう」 スカートの裾をひらりと揺らし、僕を誘う。しかし、椅子から立ち上がるそぶりを見せない僕に気付くと、先輩は首をかしげた。 「どうしたの、こわい?」 「こ、子ども扱いしないでください。怖いんじゃありませんっ」 はらはらと落ちる髪の毛が、暗闇に溶ける。首をかしげて不思議そうに見つめる瞳に囚われないように、僕は顔を背けた。なのに。 「しかたないわね」 先輩の吐息のような囁きが耳に触れた瞬間。僕の右手が握られていた。 「なんの真似ですか」 「手を繋いで行こうかと思って」 するり、からめられる指に僕の神経が過剰に反応する。 「だから子ども扱い……」 「私がこわいのよ。ね?」 嘘だ、わかってる。なのに、振りほどけない。
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