ある日、パパはATMになった!

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それで……ああ、忘れていた。 銃撃音がバンバンとうるさい。多分、郵便局に併設されたATMコーナーの奴まで襲いに行ったんだろう。 続きだ。 妻と娘は明るくなる。 ブランド物で全身をコーディネイトし、習い事も好きなピアノや茶道をやらしていく。 はじめは好きな物でも、それはちょっと違うと嫌がっていた2人はいつの間にか順応していった。 どこか、満足せずイライラしている風のように感じられた。 ただ、ATMになった反動でウエスト周りと情緒が、大変鈍くなっていた俺はあまり気にとめなくなる。 時折、家に帰ると2人とも出かけていた。貧乏な頃はろくに出かけられない分、狭い住処で窮屈で温かった。 死にかけている今ならわかる。 俺はATMにならない方が良かった。 でも、一方で2人に甘えていた事が見透かされて居たんだと気づいた。 苦労なぞかけてなんぼ。そんな事、間違ってる。 妻の雪子だって、娘の優菜だってもっと楽したかったのにな。 パパ、知らないふりしてた。 パパの家は貧乏で、親に遠慮して必死で取り繕って、気持ちを殺し続けて生きてきたのに。 俺と同じ目に遭わせない、そう誓ったのに。いつの間にか、その決意をなくしちまった。 神様、もう一度俺にチャンスを下さい。ワガママを承知して……頼むからもう一度。 決意を取り戻した俺に、2人に謝罪する機会を与えて欲しい。 俺は最後の力を振り絞って願う。 お願いだ、奇跡よ起こってくれ。
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