そして、奇跡が起こる

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「大丈夫?」 覚醒した俺はきょとんとして、周囲を見渡す。この部屋は前に来た事がある、ATM専門医院の病室だ。 俺のすぐそばに、雪子と優菜が心配そうに俺を見つめる。 あれ、俺強盗に撃たれて死んだんじゃ…… 「間一髪だったの。近くに同じ型のATMがあったでしょ。そのATMから生体パーツの移植が受けられてあなた助かったのよ」 ホッとしたのか、雪子は目尻から涙が落ち、優菜もつられてわんわん泣いている。 あなたの状態は危険な状態であり、移植手術も予断を許さなかったと、医師から安堵された。辛くもオペは成功するも、しばらく安静にしていなければならない。 労災になり、会社からも別途の特別金が支払われ、預貯金の額が一桁繰り上がった。 ただ、俺はそれよりも心配して寄り添ってくれた2人の存在が嬉しかった。いいもんだな。 2人の見舞いが終わり、また明日やってくると約束し俺は横になる。 少し疲れた、寝よう。そうして、俺は特注品の合金ベッドで目を閉じた。 次の日、医師に確認をとり、院内だけ外出する許可を得た俺は飲み物が飲みたくて、病院の自販機を見てみる。丁度甘い物以外でコーヒーしか売って いない。お茶は売り切れており、人間の時からコーヒーが飲めない俺は心の中で舌打ちをし、病室に戻った。 「あれ、もう起き上がって大丈夫なの?」 見舞いに来ていた、 いつもより笑顔な雪子が訊ねる。 「平気だよ。そっちこそ、何かいい事あったの?」 「あったけど、内緒なんだよ」と、我慢できず優菜がバラす。 「こらっ、優菜。ごめんなさい、早く話したくて仕方ないみたいで。まあたいした事ないんだけど。言ってしまうと」と、雪子はひそひそと伝える。 「奇跡が起きて、家のローンがなくなったのよ」 優菜も負けじとワクワクした様子で話す。 「ダンシン?てやつでチャラになったんだって。もう壊れちゃったから、お金を引き出せなくなったけど、最後に保険金出してもらったの。これでみんな楽しく暮らせるね」 俺は仰天する。 「えっ」
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