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彼は、今日二人で行った場所を順に戻ってくれた。
海の見えるレストラン、
一緒に歩いた浜辺(もう暗くて何も見えなかった)、
私が見たいと言って引っ張っていった雑貨屋さん、
オープンテラスのカフェ、
新しくできたショッピングモール、
……どこにも、見当たらなかった。
「もういいよ、大丈夫だから」
そう言う私を制するように、大きな手が乱暴に左耳の下へと差し込まれる。
驚いて固まった私の耳から残ったピアスを外すと、彼は背を向けて歩き出した。
「え? 待って……!」
彼の向かった先は、小さな交番。
しばらく立ち尽くしたままだった私の元に、彼は大股で戻ってきた。
「見つかったら連絡くれるってよ。番号伝えといたから」
「あ……ありがとう」
「ほら、大事にしまっとけ。こっちは絶対になくすなよ」
「……うん」
小さな光の粒を素直に受け取って、そっとポーチの中に入れた。
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