なくしたピアス

6/7
前へ
/7ページ
次へ
彼は、今日二人で行った場所を順に戻ってくれた。 海の見えるレストラン、 一緒に歩いた浜辺(もう暗くて何も見えなかった)、 私が見たいと言って引っ張っていった雑貨屋さん、 オープンテラスのカフェ、 新しくできたショッピングモール、 ……どこにも、見当たらなかった。 「もういいよ、大丈夫だから」 そう言う私を制するように、大きな手が乱暴に左耳の下へと差し込まれる。 驚いて固まった私の耳から残ったピアスを外すと、彼は背を向けて歩き出した。 「え? 待って……!」 彼の向かった先は、小さな交番。 しばらく立ち尽くしたままだった私の元に、彼は大股で戻ってきた。 「見つかったら連絡くれるってよ。番号伝えといたから」 「あ……ありがとう」 「ほら、大事にしまっとけ。こっちは絶対になくすなよ」 「……うん」 小さな光の粒を素直に受け取って、そっとポーチの中に入れた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加