僕の帰る場所

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今回の人質交換のために建てられたらしい、みすぼらしいバラックの陰と屋根の上には、物々しく武装した兵士たちが、こちらを警戒しながら見張っている。 その真ん中に、セルゲイはほんの数人の日本人たちと連れだって立っていた。 しかし、そこより先に歩を進めることを許されたのは、セルゲイと有坂龍一のたったふたり。 金髪に近い茶髪、茶色い瞳の有坂龍一は、一見しては日本人には見えないから、相手国側には中立の立場の国の外交官、と説明がなされている。 そんなセルゲイと龍一の目の端に、やがてひとりの日本人が連れ出されてきた。 あれが今回、人質交換の対象になっているジャーナリストだ。 ずいぶん痛めつけられたらしく、足元がふらついている。 拷問など、野蛮な連中だ。 セルゲイは心の中でチッと悪態をつく。
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