僕の帰る場所

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「……」 しかし! セルゲイは、つい声を荒げてしまいそうになった。 「なぜミッションの最中に、電話に出る」 「どうして、電話の電源ぐらい切っておかない」 それは『人質交換』の際の重大なマナー違反ではないのか。 人質交換にマナー違反なんてものがあるのかどうかも知らないが、でも、撃たれれば生命を失う銃口のど真ん中で、しゃあしゃあと電話に出られる龍一の神経が信じられない。 『この男は、一体なにを――』 もしかして、あえて電話に出てみせることで、この場の緊張感を取り払おうとしたのか。 それとも、空気をよまない無能ぶりをさらして、自分たちの無害さを表現してみせたのか。 セルゲイの脇にスラリと立つ、龍一の整った顔には、しかしどんな感情も読み取れない。 しれっとした顔つきのまま、うつむき加減でスマートホンに目を落としている。
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