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龍一に届いたメールの内容は、
『龍一は今どこにいるのかな。寒いね。こういうの花冷えっていうんだね』
なんのことはない、龍一の妻の美百合からのメールだ。
内容も意味もない。
ただ、龍一の所在地を聞き、現状を伝えてきているだけのメール。
相変わらず龍一は、家族にすらも、任務についての情報を漏らすことは許されていない。
妻の美百合にも話せない。
つい3日前の夜も、龍一は美百合に黙って、家を出てきていた。
何ひとつ説明せずに、それから連絡もいれていない。
つまり龍一は、突然姿を消してしまったわけだが、元秘密工作員の妻の立場を選択した美百合にすれば、こんなこと日常茶飯事だ。
珍しくもない。
それでも龍一は、こちらから発信することは叶わないが、美百合からの連絡だけは必ず受け取る。
それは龍一にとって最優先の事象。
どんな任務の真っ最中でも、たとえ現場が人質交換の真っただ中だったとしても、美百合から送られてきたメールは必ず受け取る。
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