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メールを一読すると龍一は、メールのアプリを落とし、ついでにスマートホンの電源を切った。
隣で見ていたセルゲイは、やっと胸をなでおろす。
銃で撃たれるのもごめんだが、妙な音で驚かされて心臓が止まるのも、もっと勘弁してもらいたい。
しかし次の瞬間、
「予定変更、3分でここを出る」
龍一がポツリと日本語で呟く。
「は?」
セルゲイは思わず聞き返した。
しかし龍一は、二度、同じことを説明してくれるつもりはないらしく、
「死にたくなければ、じっとしていろ」
素っ気なく命じたかと思うと、セルゲイの頭の後ろに手を置き、ぐいと地面に押しつける。
ダン!
腹に響いたのは、発砲音。
同時に、
「ギャッ!」
向こう側にいた日本人ジャーナリストが悲鳴をあげてぶっ倒れる。
あれは人質だった男だ。
そいつが倒れた。
『撃ったのか?』
助けに来たはずの相手を、この男は今まさに撃ち殺した!
セルゲイが混乱する間もなく、龍一は、
「来い」
言葉短く言って、セルゲイの腕を引き寄せた。
いや、引き寄せたというより、引っ張って転がして、ついでに尻を蹴り飛ばした。
「何をする!」
セルゲイの苦情は、たちまち火蓋が切って落とされた銃撃戦の音にかき消される。
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