第1章

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これからの予定を聞いて私は部屋に戻った。 部屋の中には私とお母さんの二人だけになった。 でも、私たちは何を話すこともせず、話すこともできず。ただただそこに座り続けた。 机の上に置かれていた見覚えのある携帯電話。お父さんのものだ。 なんとなく手に取ってメールを開いてみる。 そこにはメール無精のお父さんが私やお母さんに送ったメールが残されていた。 そのほとんどは私とお母さんを気遣うような内容ばかりだった。 手術直前もお母さんに「絶対大丈夫だから」と励ましの言葉をかけていた。 どっちが病気なのかわからないじゃないですか。と思わずつぶやく。 受信メールを過去までさかのぼっていくと一通保護されているメールがあった。差出人はお母さん。 なんとなく開いてみて、中を読んで。 思わず私は口を手で押さえた。 そこにはお母さんがお父さんに当てて送った感謝の文章が書かれていた。 いつも強気で弱みを見せないお母さんがお父さんに送った感謝の手紙。愛のラブレターだった。
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